鮟鱇や海鳴絶えぬ岬泊り 雅かず
鮟鱇の気持も知らず肝を喰ふ 正行
鮟鱇の残る顎の輪空の青 清一路
20201227 三宮勤労会館
分校のたつた五人の炉を開く 雅かず
炉開の居前を正す老師かな 頼温
つむじ風回る落葉に歩をとられ 陽
炉開や翁の語るものがたり 清一路
をちこちの落葉を踏まぬやうに行く 愛子
落葉にも小さき風の子乗ってをり 佳子
古道具物置で待つ炉開く日 みちこ
20201122 三宮勤労会館
ココア淹れ風音聴いてゐる夜寒 雅かず
足首の温さ奪へる夜寒かな 久美代
鉛筆の紙に躓く夜寒かな 清一路
庭園の焦点となり初紅葉 紀子
標高線下りてきたる紅葉かな 陽
白き峰仰ぐカールの紅葉かな 頼温
赤や黄に紅葉づる山の迫りをり 正行
20201025 三宮勤労会館
香を薫きしづかに虫を聴いてをり 雅かず
水澄みて木の葉の脈のしかと見ゆ 頼温
ゆつくりと歩めば水の澄みゆけり 佳子
水澄みて水琴窟の音色かな 和代
一片の落つるゆらぎに水澄めり 愛子
虫の秋兄の大病気にかかり 及
澄む水の底に硬化を重ねけり 清一路
肌走る乾きし風や虫のこゑ 陽
水澄める龍の手水や浅草寺 正行
ちちろ虫闇に溶けゆく閨灯 富子
名も知らぬ虫に癒され床につく みちこ
20200927 三宮勤労会館
鳳仙花あの頃はみな家族ゐて 雅かず
野地蔵の供花ともなりし鳳仙花 和代
堪へる日々知らぬ我にも終戦日 みちこ
生かされし命を思ふ終戦日 紀子
指先を見つめる少女鳳仙花 久美代
鳳仙花はじけて草のみなうたふ 頼温
じいちやんの膝で八月十五日 玲花
初めての内緒の話鳳仙花 愛子
鳳仙花空家の庭の三輪車 清一路
無住寺の雨音閑か鳳仙花 富子
終戦日写真と並ぶ古時計 正行
20200823 三宮勤労会館
流されてただよふ海月にも命 雅かず
只浮び又沈み又浮く海月 愛子
風鈴の夕風さそふ静寂かな 和代
骨抜きにされたる恋も海月浮く 玲花
風鈴や誰か来そうな音のして 富子
くろがねの風鈴の音透きとほる 清一路
風鈴や配達人の青きシャツ 淡青
風鈴の風待つ顔となりにけり 紀子
雨音に風鈴までが寂しす みちこ
風鈴やひとり遊びの真昼時 佳子
里帰り祖母の風鈴低くなり 陽
亡き姉の風鈴を吊る夕べかな 頼温
20200726 三宮勤労会館