★第40回野蒜会より★

冬帝の懐に入る里日和 雅かず

冬帝となりたる富士を拝みけり 清一路

夜を徹すペン音高しちやんちやんこ 紀子

ちやんちやんこホームステイの吾に届く 頼子

祖母の背に深き眠りやちやんちやんこ 久美代

猿使ひちやんちやんこ著て猿も著て 正行

ちやんちやんこ猫の寝床となりにけり 訓子

冬帝や言葉返さぬ九官鳥 佳子

 

2021212 三宮勤労会館


★第39回野蒜会より★

一峡を統べ一天の鷹となる 雅かず

上賀茂の酢茎の樽の醸しかな 頼温

照準を定めし鷹の急降下 紀子

鳴く山羊を爪に離さず鷹飛べり 頼子

大原女に会へて酢茎を買ひ求む 久美代

舞ひ上がり一望千里鷹の空 正行

漬け込みし老舗の誇り酢茎樽

鷹渡り鳥は彼方となりにけり 訓子

 

20211114(日) 三宮勤労会館


★第38回野蒜会より★

秋さぶの須磨に子規虚子物語 雅かず

小鳥来てゆつくり回る展望台 正行

遠景にはりつく島や瀬戸の秋 佳子

吟行の歩をとどめをり糸芒 久美代

波の綺羅弾け散るなり秋日和 清一路

新松子須磨の瀬の青凝固せり 頼温

新涼や古き旅館の九谷焼 訓子

秋の声手入れをせかす博多帯 みちこ

 

20211010(日) 三宮勤労会館


★第37回野蒜会より★

いとほしく夫喰ひ尽すいぼむしり 雅かず

貌のなき蟷螂雌にしがみつく 清一路

台風の余波に高値の野菜かな 正行

一島を攫ひ颱風過ぎにけり 紀子

台風の一過といかぬ長き雨 久美代

蟷螂に子守り任せる昼下り みちこ

蟷螂の風掴まうとする構へ 佳子

台風に耐へし大樹の幹さする 頼温

 

20210912 三宮勤労会館


★第37回野蒜会より★

苧殻火やあの日のやうに帰り来よ 雅かず

幕となる東京五輪桐一葉 正行

西国の夫と語れる門火かな 久美代

門火消え闇に隠るる面輪かな 頼温

地を這つて影を引き摺る一葉かな 清一路

高まりし一瞬のあり門火炊く 紀子

 

20210808 三宮勤労会館


★第36回野蒜会より★

すれ違ふその香水にふと追慕 雅かず

川床座敷瀬にゆつたりと風の色 佳子

せせらぎも味に一献川床料理 久美代

あの頃の香水をつけ同窓会 清一路

香水の微かな記憶叔母の帯 みちこ

お別れに香水そつと夫につけ 頼温

香水の風が行き交ふ参観日 正行

 

20210711 三宮勤労会館


★第35回野蒜会より★

湯けむりに黴びし昭和の老舗宿 雅かず

白かびをふきて昭和をあぶり出し 頼温

床軋むたび黴の香の立ち上がる 紀子

右往左往早瀬を鮎に曳かれけり 清一路

黴の香を白手袋に残す司書 頼温

黴一つ無きやう磨く風呂場かな みちこ

通されし部屋黴匂ふ一人旅 久美代

遺愛せし青黴匂ふ二眼レフ

 

20210613 三宮勤労会館


★第34回野蒜会より★

大橋は天の階夏霞 雅かず

夏霞きのふの富士を探しけり 清一路

夏霞縫うて山上リフト駅 紀子

山城を取り囲みたる夏霞 淡青

十薬や煎じし日々の懐かしく みちこ

夕暮の山紫に夏霞 佳子

連なりし山のびのびと夏がすみ 頼温

手入れせぬ庭に十薬咲きほこり 久美代

 

20210509 NET 句会


★第33回野蒜会より★

ふららこや少女は空へ風となる 雅かず

鞦韆の漕ぐ音遠き静寂かな 清一路

ふらここの子の背ふはりと手を離る 紀子

ふらここに揺れ特大のハンバーガー 佳子

ふらここのあの日の如く軋む音 みちこ

しゆうせんを蹴って夕日を引いてくる 頼温

ぶらんこを独り占めする月夜かな 正行

鞦韆やふはり回転せる宇宙 淡青

 

20210428 NET句会


★第32回野蒜会より★

雁風呂や海鳴り遠く聴く旅寝 雅かず

退院の友の手を取り青き踏む みちこ

あをきふみ立ち寄る小さき美術館 久美代

踏青や門出を祝ふシャンパーニュ 正行

昭和平成令和へと青き踏む 愛子

かんばせに受くる日と風青き踏む

 

20210328 三宮勤労会館


★第31回野蒜会より★

梅が香を辿り想ひ出たどる母 雅かず

紅白のあはひに拡ぐ梅の空 紀子

愛でられて俯ける枝垂梅 みちこ

宍道湖の落暉の染めし白魚鍋 頼温

一山を白く包みて海かをる 久美代

梅咲いて風も和らぐテラス席 正行

太宰府の梅携帯に飛んで来し 佳子

白梅や卒寿になりて語る夢 清一路

 

20210228 三宮勤労会館


★第30回野蒜会より★

夜の更けて月の天使の研ぐ氷柱 雅かず

紅白のあはひに拡ぐ梅の空 紀子

朝の日に氷柱の剣研れけり 頼温

崖氷柱落つる真昼のしじまかな 愛子

手水舎の龍から氷柱手を合はす みちこ

大滝の風鳴り渡る氷柱かな 清一路

ラガーマン前歯欠けたるナンバー九 佳子

雲水の素足も凝る氷柱かな 久美代

黄金のやかん懐かしラグビー部 正行

 

20210124 三宮勤労会館