冬帝の懐に入る里日和 雅かず
冬帝となりたる富士を拝みけり 清一路
夜を徹すペン音高しちやんちやんこ 紀子
ちやんちやんこホームステイの吾に届く 頼子
祖母の背に深き眠りやちやんちやんこ 久美代
猿使ひちやんちやんこ著て猿も著て 正行
ちやんちやんこ猫の寝床となりにけり 訓子
冬帝や言葉返さぬ九官鳥 佳子
2021212 三宮勤労会館
一峡を統べ一天の鷹となる 雅かず
上賀茂の酢茎の樽の醸しかな 頼温
照準を定めし鷹の急降下 紀子
鳴く山羊を爪に離さず鷹飛べり 頼子
大原女に会へて酢茎を買ひ求む 久美代
舞ひ上がり一望千里鷹の空 正行
漬け込みし老舗の誇り酢茎樽
鷹渡り鳥は彼方となりにけり 訓子
20211114(日) 三宮勤労会館
秋さぶの須磨に子規虚子物語 雅かず
小鳥来てゆつくり回る展望台 正行
遠景にはりつく島や瀬戸の秋 佳子
吟行の歩をとどめをり糸芒 久美代
波の綺羅弾け散るなり秋日和 清一路
新松子須磨の瀬の青凝固せり 頼温
新涼や古き旅館の九谷焼 訓子
秋の声手入れをせかす博多帯 みちこ
20211010(日) 三宮勤労会館
いとほしく夫喰ひ尽すいぼむしり 雅かず
貌のなき蟷螂雌にしがみつく 清一路
台風の余波に高値の野菜かな 正行
一島を攫ひ颱風過ぎにけり 紀子
台風の一過といかぬ長き雨 久美代
蟷螂に子守り任せる昼下り みちこ
蟷螂の風掴まうとする構へ 佳子
台風に耐へし大樹の幹さする 頼温
20210912 三宮勤労会館
苧殻火やあの日のやうに帰り来よ 雅かず
幕となる東京五輪桐一葉 正行
西国の夫と語れる門火かな 久美代
門火消え闇に隠るる面輪かな 頼温
地を這つて影を引き摺る一葉かな 清一路
高まりし一瞬のあり門火炊く 紀子
20210808 三宮勤労会館
すれ違ふその香水にふと追慕 雅かず
川床座敷瀬にゆつたりと風の色 佳子
せせらぎも味に一献川床料理 久美代
あの頃の香水をつけ同窓会 清一路
香水の微かな記憶叔母の帯 みちこ
お別れに香水そつと夫につけ 頼温
香水の風が行き交ふ参観日 正行
20210711 三宮勤労会館
湯けむりに黴びし昭和の老舗宿 雅かず
白かびをふきて昭和をあぶり出し 頼温
床軋むたび黴の香の立ち上がる 紀子
右往左往早瀬を鮎に曳かれけり 清一路
黴の香を白手袋に残す司書 頼温
黴一つ無きやう磨く風呂場かな みちこ
通されし部屋黴匂ふ一人旅 久美代
遺愛せし青黴匂ふ二眼レフ
20210613 三宮勤労会館
大橋は天の階夏霞 雅かず
夏霞きのふの富士を探しけり 清一路
夏霞縫うて山上リフト駅 紀子
山城を取り囲みたる夏霞 淡青
十薬や煎じし日々の懐かしく みちこ
夕暮の山紫に夏霞 佳子
連なりし山のびのびと夏がすみ 頼温
手入れせぬ庭に十薬咲きほこり 久美代
20210509 NET 句会
ふららこや少女は空へ風となる 雅かず
鞦韆の漕ぐ音遠き静寂かな 清一路
ふらここの子の背ふはりと手を離る 紀子
ふらここに揺れ特大のハンバーガー 佳子
ふらここのあの日の如く軋む音 みちこ
しゆうせんを蹴って夕日を引いてくる 頼温
ぶらんこを独り占めする月夜かな 正行
鞦韆やふはり回転せる宇宙 淡青
20210428 NET句会
雁風呂や海鳴り遠く聴く旅寝 雅かず
退院の友の手を取り青き踏む みちこ
あをきふみ立ち寄る小さき美術館 久美代
踏青や門出を祝ふシャンパーニュ 正行
昭和平成令和へと青き踏む 愛子
かんばせに受くる日と風青き踏む
20210328 三宮勤労会館
梅が香を辿り想ひ出たどる母 雅かず
紅白のあはひに拡ぐ梅の空 紀子
愛でられて俯ける枝垂梅 みちこ
宍道湖の落暉の染めし白魚鍋 頼温
一山を白く包みて海かをる 久美代
梅咲いて風も和らぐテラス席 正行
太宰府の梅携帯に飛んで来し 佳子
白梅や卒寿になりて語る夢 清一路
20210228 三宮勤労会館
夜の更けて月の天使の研ぐ氷柱 雅かず
紅白のあはひに拡ぐ梅の空 紀子
朝の日に氷柱の剣研れけり 頼温
崖氷柱落つる真昼のしじまかな 愛子
手水舎の龍から氷柱手を合はす みちこ
大滝の風鳴り渡る氷柱かな 清一路
ラガーマン前歯欠けたるナンバー九 佳子
雲水の素足も凝る氷柱かな 久美代
黄金のやかん懐かしラグビー部 正行
20210124 三宮勤労会館